Q-AOSプロジェクト

Q-AOSは、SDGs(国連持続可能な開発目標)を基軸としてアジア・オセアニア地域における社会的課題の解決と異分野融合による世界水準の研究を推進することを使命としています。本ページでは、Q-AOS専任教員が主導する研究プロジェクトを紹介します。

「アジア・オセアニア地域における渡り鳥の越境保護ガバナンス」

「サムネイル画像:「アジア・オセアニア地域における渡り鳥の越境保護ガバナンス」」

田中俊徳 准教授

参加研究者

蕭耕偉郎(人間環境研究院准教授)、藤岡悠一郎(比較社会文化研究院准教授)、クマル・バッタ(Q-AOS学術研究員)、天野達也(クイーンズランド大学)

概要

アジア・オセアニア地域は、世界に9つある主要なフライウェイ(渡り鳥のルート)の中で、もっとも種の多様性が高い一方、鳥の個体数が著しく減少している地域とされる(Amano et al. 2010;WWF 2015/図1)。例えば、絶滅危惧IB類のクロツラヘラサギ(Black-faced Spoonbill、以下BS)は、朝鮮半島やウラジオストク周辺で繁殖し、冬期には、東南アジアや中国、台湾、日本等で越冬をする渡り鳥である(図2)。12月頃になると、九州大学の近くにある今津干潟や佐賀県の東よか干潟、沖縄県などで観察することができる。今津干潟における観察調査によると、BSは湿地のみならず、周辺の水田や小水路、ヨシ原などを広く利用している(清水2021)。BSを適切に保護するためには、湿地を自然保護区に指定するだけでは不十分で、周辺環境の持続可能性も担保される必要がある(例えば、減農薬による水田の維持等)。

本プロジェクトでは、多国間にまたがるフライウェイの越境保護ガバナンスの研究に加え、生息環境モニタリングや保全を推進するソーシャルビジネスに着目して、学融合型の研究を行っている。対象地として、主に九州・沖縄地域の干潟と台湾に着目し、湿地間の情報共有メカニズムや保護法制、民間部門の取組等を分析する。本プロジェクトは、九州大学が組織対応型連携を行っている九州オープンユニバーシティ(QOU)との共同プロジェクト「糸島自然共生圏構想」とも密接に連携し、将来の大規模予算の獲得、アジア・オセアニア地域の持続可能性に貢献することを目指している。渡り鳥プロジェクトが、アジア・オセアニア地域の平和構築と協働のシンボルとなることをイメージしている。

図1.世界に9つあるフライウェイ© EAAFP
(東アジア・オーストラリアフライウェイは赤色で示される)

図2.今津干潟で観察されたクロツラヘラサギ
(撮影:清水孟彦)