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文化変動クラスター主催シンポジウム「情報ガバナンスと文理融合教育の課題」

イベントレポート

九州大学アジア・オセアニア研究教育機構・文化変動クラスターでは、大学院統合新領域学府ライブラリーサイエンス専攻とともに、シンポジウム「情報ガバナンスと文理融合教育の課題」を1月24日(金)に九州大学附属中央図書館で開催しました。
セッションⅠでは国連社会開発研究所の李一清(Yi Ilcheong)氏より基調講演が行われました。李氏は情報通信技術の驚異的な発達に対しての国連の戦略を提示し、その上で現状の課題について問題提起を行いました。先端的な技術は社会にとっての効果的なツールであると同時に、誰が何の目的で使うかによって抑圧の手段ともなりうる可能性があります。したがって、規制のための強力なメカニズムが求められるし、同時に新しい技術をよりよく理解するために人々への継続的な啓発が必要となります。それは新しい形態のガバナンスを求めるものである。セッションⅠではこうした問題意識から、国連を中心とした情報のグローバル・ガバナンスについて現状分析と将来展望が示されました。
セッションⅡでは情報ガバナンスの具体的課題として、個別事例の検証を行いました。まず西田亮介氏(東京工業大学)は、Twitterにおける政治広報を例として、政治・メディア環境の変化について研究報告を行いました。メディア環境の変化とともに、「規範」のジャーナリズムから「機能」のジャーナリズムへというメディア機能の変化が示されていました。とくに情報過多の時代には情報を整理・分析・啓蒙することが必要で、氾濫する情報の中で、その意図や構図、文脈を提示することがメディアには求められているという問題提起がありました。
続いて、小島立氏(九州大学)からは「ダウンロード違法化」についての審議会の議論、著作権法改正案提出見送りを事例として、多様なアクターの利害を適切に包摂する情報ガバナンスの課題が述べられました。とくにルール形成・政策形成のなかでそれらの課題解決をどのように図っていくのかという点について、具体的な事例をもとに鋭い分析が示されました。「一億総クリエイター」、「生涯学習」、「イノベーションの民主化」といった現象が進む現代社会では、著作権法は私たち全員に関係する事柄です。その意味で、「ダウンロード違法化」は創作や研究といった特定の「職種」や「職能」に限った問題ではなく、私たち全員に影響を与えかねない社会的な問題なのです。そこで、いかにして多様なアクターを包摂すべきなのかという社会的包摂が政策立案上の課題となります。
セッションⅢでは情報ガバナンスの人財育成、文理融合教育の課題についてパネル・ディスカッションを行いました。パネル・ディスカッションは7人のパネリストから構成され、前半4名は研究者の観点から(成原、中野、今井、中藤)、後半の3名は実務家の観点から(加藤、広瀬、森)、それぞれ情報ガバナンスやその人財育成についてコメントしました。
このように本シンポジウムでは、基調講演、研究報告、パネル・ディスカッションという盛りだくさんの内容ではありましたが、それぞれ国際的な課題、日本を事例とした国内の課題、さらに研究者と実務家からの問題解決のための協働の課題が提起され、情報ガバナンスの課題を多方面の知見を活かして議論する貴重な機会となりました。

*本学HPのトピックスページにも掲載されています。詳しくはこちら

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日時 2020年1月24日  ~ 2020年1月24日